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キミを愛シテ溺れてる
第5章 *キミを愛シテ溺れてる 3
傘を落として涙を拭う風子を黙って見ていることしかできない。
「うっ…、ううっ……。……私も…好き」
ザァーっと降り続いている雨の音に掻き消されそうなほど小さく聞こえた声。
はっきりと聞きたいのに、聞けなくて雨音が邪魔だと思った。
「諦めようとして颯太のことを好きになろうとしていたけど、ずっとソラのことが忘れられなかった」
まだ好きでいてくれたんだ……。
その事実が嬉しくて、遂に気持ちが抑えきれなくなった俺は風子を自分の胸に引き寄せる。
生まれて初めて誰かを抱き締めて、体で体温を知った時だった。
制服が雨でびっしょりと濡れていて冷たいけど風子の温もりを確かに感じる。
愛おしいと思える温かさ。
心に芽生えてくる気持ちと体に感じる温もりの全てが初めて経験するものだった。