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園主の嫁取り(くすくす姫サイドストーリー)
第1章 果樹園の後継者
ある冬の日、当主がどこからか、一人の少年を連れて帰ってきました。
少年がどのような身の上であるのかすら当主は語らず、屋敷に住まわせ始めました。
使用人として拾ってきたのであろうと思っていた人々は、日が経つに連れて、訝り始めました。
(傍に置いて手ずから教えているらしいぞ)
(使用人としての仕事をさせる気はこれっぽっちもなさそうじゃないか)
(春から学校に通わせるから用意をするようにと家令様に言われたそうだぞ)
春が来る頃、長老たちは会議の開催を願い出ました。
議題は勿論、正体不明の少年のことです。
会議の場に赴いた長老たちは、驚きました。
長卓に、今日の議題たる少年が座っていたからです。
「これは、どういうことですかな?」
「彼についての話し合いの場に、彼を同席させるとは…」
「子どもの来て良い場所ではないぞ。下がらせろ、クロウ」
「……お言葉ですが」
給仕と議決のためにその場に控えていた家令のクロウは、静かに口を開きました。
「彼の同席は、当主さまのご意思です。ご意見があれば会議で発言なさってください」
「なんと!?」
長老の一人が(この、家令風情が)と口に出そうとした瞬間、果樹の彫刻が施された木製の扉が開きました。
「ご着席を。開会でございます」
当主の登場にしぶしぶ着席した長老たちは、その後の当主の言葉に、度肝を抜かれることになります。
「今日は何の召集かな?……ああ、ちょうど良いから、皆にも紹介しておこう。」
当主はこっちに来い、と、少年を呼びました。
黒い髪と色の濃い目を持った少年は、何の表情も浮かべずに、当主と並んで長老達の前に立ちました。
「紹介しよう。私の跡継ぎで、名前はサクナだ。」
少年がどのような身の上であるのかすら当主は語らず、屋敷に住まわせ始めました。
使用人として拾ってきたのであろうと思っていた人々は、日が経つに連れて、訝り始めました。
(傍に置いて手ずから教えているらしいぞ)
(使用人としての仕事をさせる気はこれっぽっちもなさそうじゃないか)
(春から学校に通わせるから用意をするようにと家令様に言われたそうだぞ)
春が来る頃、長老たちは会議の開催を願い出ました。
議題は勿論、正体不明の少年のことです。
会議の場に赴いた長老たちは、驚きました。
長卓に、今日の議題たる少年が座っていたからです。
「これは、どういうことですかな?」
「彼についての話し合いの場に、彼を同席させるとは…」
「子どもの来て良い場所ではないぞ。下がらせろ、クロウ」
「……お言葉ですが」
給仕と議決のためにその場に控えていた家令のクロウは、静かに口を開きました。
「彼の同席は、当主さまのご意思です。ご意見があれば会議で発言なさってください」
「なんと!?」
長老の一人が(この、家令風情が)と口に出そうとした瞬間、果樹の彫刻が施された木製の扉が開きました。
「ご着席を。開会でございます」
当主の登場にしぶしぶ着席した長老たちは、その後の当主の言葉に、度肝を抜かれることになります。
「今日は何の召集かな?……ああ、ちょうど良いから、皆にも紹介しておこう。」
当主はこっちに来い、と、少年を呼びました。
黒い髪と色の濃い目を持った少年は、何の表情も浮かべずに、当主と並んで長老達の前に立ちました。
「紹介しよう。私の跡継ぎで、名前はサクナだ。」