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雪の日に祝福を・・・。
第1章 手記
「なら、・・・くれますか?」
耳元で悪魔のひと言をそっと囁く。ゴクリと男が唾《ツバ》を飲み込んだのが判った。
「月依、ちゃん・・・」
囁かれた内容に少女の深い痛みを思い知らされ青ざめてしまう。黒い深い闇色の瞳を見せて少女は、言い返せない自分を置き去りに到着したエレベーターに乗り込んでしまった。
【 瑠々を、殺して 】
甘く艶《ツヤ》めいた声音でそう囁いたのだ。
》 》
私は、逃げるように中学を卒業してから親元から遠く離れた海辺の全寮制の学校に進学した。
両親が学校行事に来ることは、なかったがそんなこと構わなかった。
授業料と生活費を高校卒業まで支払ってくれただけで十分だった。
しかし妹から来る毎月の手紙が鬱陶《ウットウ》しかった。私を無邪気に〝姉〟と慕うその純真さが〝苦痛〟でしかなかった。