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雪の日に祝福を・・・。
第12章 終わりのハジマリ
「知らないわ。」
素っ気なく返して歩きを止めずにいると腕を掴まれた。
「ちょっと。」
「頼むよ。」
手の中にメモを握らせてオフィスに戻った。
「全く・・・悠葵、私も病気・・・・・・なのよ。」
誰にも届かない声で去って行く元婚約者の背中に言った。
誰にも見送られることもなく会社を出て足下に注意しながら家路に着いた。
「大家さん。」
「おや、月依ちゃん。」
「電話でとも思ったんですが、きちんと顔を見て話したくて。」
大家のもとを訪れたのは、部屋を出るためだった。
「なにか困りごとかな?」
「実は、マンションを出ようと思ってるんです。」
「どうしたね。」
「実は、心機一転しようかと思いまして。」
「そうかい。残念だねぇ、いい人に住んでもらったのに。」
「長くお世話になりました。」