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雪の日に祝福を・・・。
第12章 終わりのハジマリ
静かに答えた。
「君に穏やかな最期を迎えて欲しいんだよ。」
本心であった。
元の土地を嫌い遠くの病院にやって来た彼女の気持ちは、判らなくはない。しかし小さな病院で出来ることは、限られている。出来ることならばきちんとした病院で穏やかに過ごして欲しいと思ったのだ。
「医師・・・ここまで来たのに。そんなあっさりと追い出すんですか?」
「ここで出来ることは、たかがしれているんだよ。」
「・・・判りました。
次、倒れたらあちらに運んで下さい。」
しつこさに答えてしまった。
身体の怠さで上手く口も回らない。
「じゃあ、次倒れたらあちらに搬送させてもらうよ。」
「はい、医師。」
医師の強い口調に頷き項垂《ウナダ》れた。医師は、暗い表情のまま部屋を出て行った。
最近は、部屋の天井を見るよりも病院の白い天井を見ている方がはるかに多い。