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雪の日に祝福を・・・。
第12章 終わりのハジマリ
知り合いも居ない小さな海辺の町に来てから病状の悪化が早くて1人暮らしと言えるような優雅な生活は、全くと言っていいほどに過ごせていなかった。
商社に勤めこつこつでもないがしていた貯金をこんな生活の為に使うことになるなんて想像もしていなかった。もしかしたら彼との結婚資金になっていたかも知れない。
社長が餞別として退職金も多くくれたにも関わらず病気と生活にむしり取られていた。
緊急搬送されたら1日は、帰してもらえない。
通院するにも歩きは、もう難しくタクシーを使うのでその出費もある。
「はあ・・・」
ようやく病院から解放されて自宅に戻った。必要最低限の物しか置かない部屋の中は、殺風景で彼と過ごしていた日々とは雲泥の差であった。
最近は、ため息しか出ない。しかし悪いことをばかりではない。
彼が父親の元に返ってから1ヶ月がすぎようとしていたある日・・・