- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
雪の日に祝福を・・・。
第16章 雪の日に祝福を・・・。
「あっ、月依━━━っ!!」
悲しいが愛おしい叫びが屋上に響いた。
彼女と2人に舞い落ちる紙吹雪がまるで旅立ちを祝福しているようだった。
》 * 》
己の病の進行状況を彼女は、主治医よりもよくよく理解していたようだ。
荷物の中からは、〝式は、簡単なものでよい〟と言う手紙が出て来た。
あの日をかなり前から計画していたのは、言うまでもない。院内外から情報が集まった。決行日は、急遽決まったようだが。
院内学級で紙吹雪を作っていたこと。そして睡眠薬の処方が過度になったこと。これは、そのときに大量摂取するために集めていたと思われる。
ワインは、わざわざ自分の生まれ年の1級品をセレクトして買っている。
〝退院祝い〟と嬉しそうに購入していたことが転院の証言で判っている。
こうして着実にケリをつける段取りを1人黙々と進めていたのだ。