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雪の日に祝福を・・・。
第5章 失った世界の景色
自問自答していると机にコーヒーが置かれた。
「ただいま、若狭。」
「(あ・・・)」
声に反応して顔を上げると温もりある笑顔に顔が綻ぶ。
「お帰りなさい、鈴村くん。」
呼び方も立ち位置さえも変わってしまったが未だに心をざわつかせる人。
「無事に戻ったよ。」
特別な感情や誰にでも人当たりがいい笑顔に心をざわつかせている場合でないのは、判っている。しかし時が止まればいいと思える瞬間だ。
「瑠々も赤ちゃんも無事?」
「よかった。でももう私には、関係ないから。」
くれたコーヒーにさえ目を向けずに仕事に集中する。
「おー帰ったな、新婚さん。」
部長が無神経にも2人の間に割って入ってきた。その所為で調子よく食べてきた朝食がせり上がる。