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雪の日に祝福を・・・。
第5章 失った世界の景色
「部長・・・」
気まずい空気が流れる。
「子どもが生まれたら2人でなんてそうそう旅行なんか出来ないから楽しんできたか?」
「・・・はい、おかげさまで。」
「(ダメ・・・・・・)」
ガタン!
「若狭・・・居たのか。」
椅子と机が当たる音でようやく気が付いた。
「いいえ、お構いなく。」
部長の鈍感さにイライラする。
「どうぞ、続けて。席を外すので。」
気を利かせて出て行ったように見せかけた方が楽だった。
ゆっくりオフィスを出てから早足でトイレの個室に駆け込んで全てを戻した。
「うっ、うぅ・・・」
涙がボロボロと一緒に零れ落ちた。
》 》
初めて手にした愛の後遺症は、重かった。今でも思い出す。
こんなにも脆くなれるものかと・・・感じていた。
自分がお膳立てした倖せが心を蝕んでいく。