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籠鳥 ~溺愛~
第19章
『……美冬ちゃんは高校、行きたくないの?』
『朝までバイトしてでも通い続けていた高校だろう? 国立大の進学率だっていいとこだし、高校受験かなり頑張ったんじゃないの?』
『……美冬ちゃん、駄目だよこのままじゃ。ちゃんと自分の心と向き合って――』
五月蠅い。
(うるさい、うるさい、うるさい――っ!!)
美冬は両手で耳を覆って、頭の中で繰り返される言葉から目を背ける。
「………っ」
(高柳さんは、私と鏡哉さんを離そうとしているだけなんだ!)
矛盾した思考が頭を占拠し、頭が割れそうにがんがんと痛い。
(私は鏡哉さんと一緒にいたい、ただそれだけなのに!
なんで、どうして邪魔をするの!?)
美冬はふらふらしながら壁に手を付き、リビングのソファーの上に倒れこむ。
「鏡哉さん、助けて……」
思わず零れた呟きが、広い室内にむなしく響く。
目が壊れたように涙が次々と溢れ、ソファーを濡らせていく。
鏡哉と一緒に居られれば、この部屋の外に出なくても構わなかった。
鏡哉に愛してもらえるなら、なんだって我慢できた。
(なのに、なのに
私達はそんなに一緒にいては駄目だというの――?)
美冬は髪がぐしゃぐしゃになるのも構わず、頭を抱える。
気を抜くと思わず叫びだしてしまいそうだった。
唇を噛んでその衝動を耐える。
『駄目なんかじゃないんだ、美冬』
『私たちは愛し合っているんだ。駄目なことなんて何もない――』
あの日自分を満たし、甘く拘束した鏡哉の言葉が浮かぶ。
愛しい鏡哉の言葉。
その言葉がまた美冬を捕え、その思考を上書きしていく。
すとんと何かが落ちたように、荒れ狂っていた心が静まる。
「………」
(ああ、大丈夫。
貴方がいれば、私、他に何もいらない――)
美冬はソファーの上で自分を抱きしめるように丸くなり、目を閉じた。