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籠鳥 ~溺愛~
第19章
だいぶ長い間、眠っていたようだ。
夕焼けの赤い日差しが、リビングのガラスから差し込んでいる。
ソファーの上で目を覚ました美冬は、頭痛が引いていることにホッとし立ち上がった。
バスルームに行き鏡を見ると、髪はくしゃくしゃで頬には乾いた涙の跡があった。
少し瞼も腫れている。
美冬は早くその姿を消したくて、ばしゃばしゃと冷水で顔を洗った。
鏡に顔に水滴を付けた自分が映る。
それがまるで泣いているように見えて、美冬はすぐにタオルで拭う。
タオルの中にため息を零す。
今日は結局、勉強も家事も出来なかった。
鏡哉が帰ってくるまでに、いつもの自分に戻らなくてはならない。
高柳が来たことは言ってはいけない気がいした。
言ってしまったら、今度こそ高柳は鏡哉に解雇されるかもしれない。
タオルをギュッと握りしめた時、
ピンポーン。
呼び鈴が鳴った。
美冬の華奢な肩がびくりと震える。
とっさに鏡哉だろうかと思い、それはないだろうと打ち消す。
鏡哉は鍵を持っている、インターフォンを鳴らす必要は無い筈だ。
(そういえば、高柳さん『また、夕方来るから』って――)
どくり、心臓が脈打つ。
ピンポーン。
また呼び鈴が鳴る。
(どうしよう。高柳さんは顔パスだから、ここの玄関の前まで来てしまう)
おろおろとしていると、玄関のほうから物音が聞こえた。
美冬は恐る恐るバスルームから出る。
玄関の扉が目に入った時、ガチャリとそれは外から開かれた。
「………」
絶句した美冬の手のひらから、握りしめていたタオルが滑り落ちる。
扉から入ってきた高柳に美冬は目を見開く。
「どうして――」
どうして鍵が開けられたのかと問おうとしたとき、高柳の後ろから人影が現れた。
暗めの照明の廊下から一歩玄関へ足を踏み入れ、その人物の顔があらわになる。
美冬のいる廊下から玄関は数メートルの距離があったが、はっきりと見て取れた。
「………」
足元から崩れ落ちた美冬の元に、高柳が駆け寄ってくる。
「美冬ちゃん、大丈夫?」