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籠鳥 ~溺愛~
第20章
それには自信がなかった。
高校を辞めると決めた今、確かに大検へ向けて必死に勉強をしているつもりだが、ふと我に返ることがある。
自分は一体どうしたいのだろうかと。
鷹哉の言ったとおりだ。
本当に鏡哉は自分を大学に行かせる気があるのだろうか。
大検を受けて大学に行けと言ったのは鏡哉だ。
その言葉に嘘はないと信じたい。
(でも……何の保証もない――)
『鏡哉は今のことを知られたら、社会的信用をいっぺんに失う』
これも鷹哉の言う通りだった。
付き合う前ならまだしも恋人同士となってしまった今、鏡哉の置かれている立場はとても危うい。
軟禁については美冬はなにも言うつもりはない。
たしかに最初は閉じ込められたが、両思いになってからはいつでも出て行こうと思えば出来たのだ。
ただ、自分がそうしなかっただけ。
鏡哉と離ればなれになるかもしれない。
もしかしたら一生、鏡哉と会うことはないかもしれない。
それほど二人の住む世界は違いすぎた。
「そんなの、やだよ……」
美冬の唇から呟きが漏れる。
(私の傍にずっと居て! 私以外を見ないで!)
そう言えればどんなにいいだろう。
そして、そんなことを言える訳もないことも分かっている。
くしゃり。
美冬の顔が歪む。
もう体がカラカラで、涙は一滴も出ない。
こんな時こそ、泣いて喚いてしまいたいのに。
「………はあ」
夜の間中、同じことを何度も何度も繰り返して考え抜いた。
何度考えても、同じ答えしか導けなかった。
美冬は枕に突っ伏していた頭を起こすと、ベッドから降りた。
閉じていたカーテンを音を立てて開ける。
空は白み始めていた。
(鏡哉さん、私は貴方のことを愛している。
それだけは自信を持って言える。だから――)
「……よし」
そう気合を入れる声を上げると、壁の傍のデスクに近づく。
美冬は引き出しからレターセットを取出し、椅子に座った。
(さあ美冬、一世一代の嘘をつこう。
鏡哉と自分、それぞれの未来のために――)