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籠鳥 ~溺愛~
第24章
美冬のことを好きだ、愛している。
しかし『こういう事』をする彼女は好きになれない。
また自分の中で何かを溜め込んで、家出という暴挙に出てしまったのだろう。
今回は全く心当たりがなかった。
今日の朝の美冬におかしいところはなかったし、可愛く行ってきますのキスまで強請ったではないか。
手を伸ばして封筒を取る。
鍵を思わせる重みが掌に伝わる。
中には鍵と一枚の便箋が入っていた。
鏡哉は億劫そうに便箋を開く。
『 私は貴方の鳥籠の中で、美しく 囀(さえず)る鳥にはなれません。 』
その一文だけだった。
鏡哉は便箋をくしゃりと握りつぶす。
「くそっ」
口汚い言葉が唇から洩れる。
胸元から携帯電話を取り出すと、美冬が以前契約したアパートを管理している不動産会社に電話をする。
しかし美冬の名前でも高柳の名前でも、契約をしていないことしかわからなかった。
高校に電話をしてみるが、職員がすべて帰ってしまったのか繋がらなかった。
(どうせ高柳が絡んでいるのだろう)
鏡哉は秘書を解任して以来、連絡を取っていなかった高柳の番号を出し通話ボタンを押す。
すぐに電話に出た高柳に、開口一番「美冬をどこへやった」と問い詰めた。
『……それを私が喋ると思いますか?』
その答えからやはり高柳が絡んでいると知った鏡哉は、口を開く。
「言わなければ、今度こそお前をクビにする」
『ふ……無理ですよ』
「なに?」
怒気をはらんだ声を漏らした鏡哉に、高柳は淡々とした口調で返す。
『この件には取締役が絡んでいます』
その言葉に鏡哉は息を飲んだ。
「…… 親父(おやじ)が?」
『俺が「社長が未成年の美冬ちゃんを軟禁している」と取締役に伝えたんです』
さらりとそう言った高柳に、鏡哉の奥歯がぎりりと鳴る。
「お前、こんなことをしてただで済むと思うのか!」
『どうでしょうね。ただ、村上にも取締役の息がかかっています。あいつを使おうとしても無駄ですよ』
「………っ」
『社長……』
黙り込んだ鏡哉に、高柳の静かな声が届く。
『美冬ちゃんの意思、尊重してあげてください。あの子は――』
言いかけた高柳を鏡哉は通話を切って遮った。