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籠鳥 ~溺愛~
第2章
(あぶないあぶない、心の声が外に出てしまった……)
鏡哉は内心冷汗をかきながら、ちらりと勉強している美冬に視線を送る。
彼女を見ていると飽きない。
難しい問題の時は苦悩の表情、解けたときはぱあと明るい表情と、めぐるましく変わる。
まるでひとり百面相をしているようだ。
それになぜか見惚れてつい口を滑らせてしまった。
時計を見るともう22時を回っていた。
「美冬ちゃん、そろそろお風呂入ったら?」
鏡哉はそう美冬を促したが「鏡哉さん、お先にどうぞ」と言われたので「背中流してくれる?」と問い返すと、美冬は文字通り真っ赤になった。
「ふ、冗談だ」
鏡哉は笑いをかみ殺してバスルームに入った。
久しぶりに掃除をしたことで凝り固まった肩を、広いジャグジーで揉み解す。
自然と口元が綻ぶ。
彼女がここに来てからの自分はよく笑うようになったと思う。
どうしても小動物のようにくるくると動き回る美冬を観察していると、口元が緩むのだ。
(そうだ、まるで小動物――子猫やリスに近い)
155センチあるのかと思うほどの背丈に、青白くも見える痩せた体。
まだ発育途中なのだろう、凹凸の少ない胸や腰は、一歩間違えば中学一年生にも見えてしまう。
(まあ、ここで栄養たっぷりの食事と規則正しい生活をさせれば、普通の女子に成長するだろう)
鏡哉の今の気分は『足長おじさん』というよりは『小動物の飼い主』だった。
(「背中流してくれる?」なんて……鏡哉さん、冗談きつ過ぎ)
美冬は鏡哉の後にジャグジーにつかりながら、先ほどの出来事を思い出す。
湯上りの鏡哉はバスローブの前を大きくはだけさせて、キッチンでミネラルウォーターを飲んでいた。
そこから覗き見えた胸が美冬が思っていたよりも筋肉質で逞しく、ああ、この人は男の人なんだ――と再確認させられた。
思い出すとなぜか頬が火照り、美冬は鼻の下までブクブクとジャグジーの中に潜る。
(鏡哉さんは、一体どういうつもりで私を保護してくださったんだろう……)
同情からくる優しさ?
お金持ちの道楽?
足長おじさんに憧れて?
どちらにしても美冬は助かる。
規則正しい生活と今の給料が保障されていれば、後は勉強を頑張ればおそらく念願の大学には通えそうだ。