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籠鳥 ~溺愛~
第14章              

 そうでもしないと、鏡哉がこの部屋から外に出るのを許してくれそうにないのだ。

「駄目だよ、そんな可愛い顔しても」

 鏡哉は美冬の頬に口づけする。  

「その代り業者のものに荷物を取りに行かせる。アパートも解約してくる」

 有無を言わせぬ勢いで、鏡哉はそう口にした。

「バイトも断るんだよ、いいね?」

 鏡哉の瞳が真剣で、美冬はとっさに頷いた。

「いい子だ」

 満足そうに微笑んだ鏡哉は、美冬を開放すると朝食を食べ準備をして会社へ出かけて行った。






 翌日には美冬の荷物がアパートから届けられ、美冬は前のように自分にあてがわれた部屋に荷物を片付けた。

 ひと段落して入れた紅茶に口を付ける。

 ふうと細い息が小さな口から洩れる。

(こんなことになるなんて――)

 美冬は困ったように首を竦める。

 一大決心をして出て行ったはずの鏡哉のマンションに、数日もたたないうちに戻ってきてしまった。

 元々出て行った理由が鏡哉が部屋に帰ってこなくなったのと、鏡哉に恋してしまった自分が苦しくて――だったのだがその二つが解決してしまった今、鏡哉が言うようにこの部屋から出ていく必要はない――筈だ。

「………」

(高校、辞めるんだ、私――)

 バイトでどれだけ疲れても眠くても、休まずに通い続けた高校。

 いつも忙しい美冬は親友と呼べるほど仲良い友達がいたわけでもないが、それでも何人かのクラスメートと一緒にお昼を食べ、くだらない事で笑いあったりした。

「………」

 気分が沈み視線が落ちる。

(これで、本当にいいのだろうか?)

 自問自答して瞼を閉じた美冬だったが、はっとして瞳を開くとぶんぶんと首を振った。






   『私たちは愛し合っているんだ。駄目なことなんて何もない――』






 愛する鏡哉がそう言ってくれたのだ。

 両親なき今、美冬が唯一心を預けられる、愛しい人――。

(これ以上何を望むことがある?)

「………」

 美冬はパチンと両手で頬を叩くと、勉強に取り掛かった。





 
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