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陽向の恋
第4章 四

『苗ちゃん、その格好何?!』

『何って何が?』

『胸が強調され過ぎ!』

 高校三年生の時の冬、祖父の一周忌で家に陽向が来ていたあの日。リビングで会って早々、陽向は私の胸を見て叫んだ。

『別に……』

 変な格好はしていない筈だ。母親から黒い服を着ときなさいと言われて、黒いタートルネックのニットと、マキシ丈のスカートを履いていた。確かに、胸は強調されているかもしれないけど。

『私の胸なんて誰も見ないよ~』

 気にせず、へらへら笑う。そんな私に何故かイラついたように眉をピクッと動かして、陽向は続けた。

『へぇ……そんな無防備なら何されても知らないよ?』

『何言ってんの、陽向!超うける~』

『本当に、知らないから!』

 そのまま怒鳴って、陽向はリビングから出ていった。今思えばこの出来事のせいで、その日の夜に陽向から寝込みに胸を触られたのかもしれない。無防備で無神経な私に腹が立って、思い知らせようとしたのかもしれない……。


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