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陽向の恋
第5章 五

 翌日出勤して、昨日のことも忘れたまま仕事に励んだ。時刻は十三時。昼休憩の時間。同期の花菜(はな)とランチをして、エレベーターで三階にある部署へ戻ろうとしていた。

「苗ちゃん、ちょっと先に行ってて。お化粧直してくるね?」

 だがそう言って花菜は、エレベーターの前から化粧室へと歩き出す。その光景を見ながら、私は頷いた。

「あ、うん。先に行っとくね~」

 そのまま一分程待って、エレベーターが降りてくる。ドアが開いて、私一人乗る。……と、思いきや。

「ランチか~何食った?」

 後ろから課長が乗り込んできて、私に質問した。

「課長!今日はパスタにしました」

「パスタ?何の?」

「明太子クリームです」

「明太子って、女子好きだよな」

 ……びっくりした。他に誰もいないと思ってたから。課長と普通に会話しながらも、私は少し緊張しつつ三階のボタンを押す。と、ドアが閉まって、エレベーターが上昇し始めた。

「課長は何パスタがお好きですか?」

 加地(かじ)課長。は本名、加地 隆晴(たかはる)。39歳独身で仕事が出来、部下から慕われている。私も上司として、好いていた。それに、親戚のお兄さんみたいで話し掛けやすい。

「俺は……そうだな……」

 私から聞かれて、課長がじっと私の顔を見る。そういえば陽向が、加地課長も私の胸をいつも見ていると言っていたけど、本当だろうか。この人がそんな人だとは到底思えないんだけど……。

「俺は……」

「……」

 加地課長が答える前に、エレベーターが三階に着いてしまった。そのままドアが開いて、加地課長はエレベーターから降りていく。それからネクタイを締め直しながら、自分のデスクへ歩いていった。

「何パスタが好きなんだろう……」

 続いて降りてから気になるも、私も自分のデスクへ向かった。

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