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陽向の恋
第5章 五

 それから仕事を終え、17時。うちの部署は殆ど残業がない為、チャイムが鳴った後、一斉に職員達がエレベーターへ向かい歩き出す。私も鞄を肩にかけ、退勤しようとした。

「三浦、ちょっと来い」

「あ、はい……」

 だが加地課長から呼ばれて、立ち止まる。……何だろう。仕事ミスしたかな……。そう思いながら私は、加地課長のデスクへ歩いていく。

「あ~、その何だ……」

 加地課長はぽりぽりと右手で頭をかきながら、言いにくそうにするも。普段のあっけらかんとした調子で言った。

「俺と付き合え」

「はい?!」

「だからぁ~俺と付き合えって言ってんだろ」

「……付き合うって何処へですか?」

「そういうお決まりのギャグは良いんだよ!好きなんだよ!三浦が!」

 退勤して、誰も残っていない部署。……良かった。誰もいなくて。勿論、誰かいるなら課長も告白するわけはないだろう。けど……

「課長が?!私のことをですか?」

 ビックリした……。だって年の差が10歳以上もあるのに。まさか課長が私のことを好きなんて。これってやっぱり……胸目当て?

「何だよ?悪いか?」

「……」

 恥ずかしそうに頬を赤くしている課長を見て、陽向の様なことを考えてしまう。男はみんなおっぱいが好き。きっと課長も、私の胸が目当てで……?ここは、はっきりしておこう。

「好きなのは私の胸ですか?」

 冷静に質問して、課長の態度を観察する。

「……そそそんな!バカなことあるか!まぁ、巨乳は好きだけどな……」

 慌てる言動。殆ど認める言葉。……クロだ。

「お断りします」

 私は冷たく言って、課長へ背を向ける。


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