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陽向の恋
第6章 六
……――六畳一間で、ベランダ付きの和室。私と花菜は入った瞬間、畳へ寝転んだ。
「良い宿だねぇ~。苗ちゃんも来れて良かった~」
「うん。……来て良かった」
初めはどうなることかと思ったけど、やっぱり旅行は楽しい。温泉も気持ち良いし、旅館も素敵だし。後は……加地課長のことを何とかすれば……。
「花菜……私、三年ぐらい付き合ってる彼氏がいるって知ってるでしょ?」
「うん、年下の彼氏だよね?」
「あれってさ……同じ会社の、戸塚君なんだ……」
隣に寝そべっている花菜へ、緊張しながら告げる。同時に一瞬ポカンと口を開けて、花菜はすぐに起き上がった。
「えっ?!嘘!」
「ごめん、言ったら気遣うかと思って……」
「戸塚君って苗ちゃんと従兄弟だよね?えぇー!そうなの!?」
驚かせてしまった。悪いことをしたかもしれない。ずっと陽向と付き合っていることを黙っていたんだから。
「やっぱり従兄弟って、近くにいるから好きになるのかな?」
「そうかも……」
驚きながらも質問してくる花菜。そんな花菜へ頷いて、私は話を変えようとした。
「この事、会社の人には黙っててね?」
「勿論だよ!」
「そういえば、もう少しで夕食の時間だね。そろそろ行く?」
「そうだね~」
私の言葉にニコニコと返事をして、花菜が立ち上がる。すると……ピコンと私のコートのポケットに入れている携帯が鳴った。不思議に思いながら確認するも、
『午後5時45分 部屋に行くから』
陽向からLINEが届いていて、無表情になる。
「……」
何?部屋に行くからって。今から?何で?花菜もいるんですけど……。
「どうしたの?苗ちゃん」
「何か……戸塚君……陽向が、部屋に来るって……」
「……あっ!」
固まっている私を不思議に思ったのか花菜は質問して、私から返事を聞いた途端、何か気付いた様に両手を口に当てた。そしてゆっくりドアの方へ、後ずさっていく。
「花菜……?」
「……」
「あの……」
無言でニコニコしながら後ずさっていく花菜へ話し掛けるも、返答はなく。そのまま花菜が部屋から出て、ドアを閉める。その光景に、後ろめたさを感じてしまった。
「花菜に……」
気を使わせてしまった――