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陽向の恋
第6章 六
* * *
「あ~……苗ちゃん、気持ち良かったねぇ、温泉」
そのまま温泉に入り浴衣を店に返して、私達は旅館へ戻った。玄関でスニーカーを脱ぎ、旅館へ上がる三人。
「また後でここの温泉にも入ろうね、苗ちゃん」
「うん」
温泉に入ってからずっと幸せそうにしている花菜に、私は頷く。
「ほら、お前達の部屋の鍵」
「ありがとうございます、課長」
それから先にフロントから鍵を受け取ってくれた課長から鍵を受け取り、お辞儀した。結局課長、本当に私達の子守りしてくれたな……。良かったのかな。自分の行きたいところ行かなくて。
「これから1階で飯だ。6時だぞ。遅れんなよ」
「はい……じゃあ花菜、部屋に荷物置きに行こう」
二階へ上がる階段の方へ歩き出しながら、私は加地課長へ返事をし、花菜へ話し掛ける。
「おい、三浦」
「何ですか?」
「……可愛かったぞ。浴衣……」
だが課長から呼び止められたかと思うと、ポツリと言われて急に恥ずかしくなった。……何言ってんの、この人、こんな時に、こんな場所で。言った本人が一番恥ずかしそうだし。
「飯、遅れんなよ」
気恥ずかしさを隠す様に階段へ向かって歩き出す課長。その言動に私は顔を青ざめた。
「……」
まずい。早く陽向と付き合ってることを言っても良いから、ちゃんと彼氏がいるって断らないと。泥沼にはまりそう……。
「苗ちゃん、行こうか~」
「うん……」
階段を上り始めている花菜。そんな花菜から言われて、私は階段の前で止めていた足を再び動かし始めた。