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陽向の恋
第7章 七

「杉本……?!」

 課長が畳に転がった杉本さんを驚きながら見る。私も冷や汗を滲ませつつ、気を失った杉本さんに呆然としていた。それからすぐテーブルの方から声がして、視線を変えた。

「課長~、セクハラですよね、それ」

「戸塚?何だ、お前」

「この腕だよ!この腕を苗ちゃんから離せって言ってんだよ!」

 テーブルの前に立っている陽向は、不機嫌そうに課長の腕を掴んで私の首から離させる。周りは宴会で騒がしく、誰も私達のことに気付いていそうにない。多分……。

「っ?!お前、俺に向かって……!」

「クビにするならしてみろよ。俺はセクハラで訴えてやる!」

「う……」

 陽向がはっきりと言い放ち、課長をビシッと指差す。それに動揺したのか、課長は広間から出ていった。

「……」

 助かった……。そう安心したのも束の間。

「苗ちゃん、この魔性め!」

 課長の座っていた場所へ座り、陽向が怒ってくる。申し訳ない。本当に……。

「ごめん、本当に……」

「じゃ、お礼してよ」

「お礼?」

「助けてあげたお礼だよ」

 急に顔を私の顔へ近付け、真剣に話す陽向。その言葉に、私はふと昔を思い出した。
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