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陽向の恋
第8章 エピローグ
* * *
社内旅行から一週間。旅行気分も消え、社内は再び仕事ムード一色。
「三浦、今年の新入社員の研修資料を作っといてくれ」
「はい、課長」
加地課長がデスクへ寄ってきて、私へ頼む。と、私はキーボードを打つ手を止めながら、パソコンから加地課長へ視線を変えた。あれから課長は、私へ仕事以外で接触して来ない。もう心の整理がついたんだろう。流石、大人の男。
「あ~そういえばこいつだ、こいつ。新入社員の奴が、三浦のこと知ってるとか言ってたぞ」
「えっ?誰ですか?」
「間宮 千景(まみや ちかげ)って、知り合いか?」
「まみや、ちかげ……」
課長が履歴書を見ながら話すと、一瞬不思議に思うも、すぐに私は驚いた。
「千景君?!……って、戸塚君の弟です……」
「戸塚の?でも名字が違うじゃねーか」
「彼の家庭も色々あったもので……」
「そうか……」
私の言葉に何かくみ取った様に、そのまま課長は返事をして、デスクから離れていく。
「兎に角、資料よろしくな~」
「はい……」
その光景を見ながら、私は呆然としていた。千景君まで同じ会社とか、どうなってるんだろう。帰って陽向に聞かないと……。