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異形疾病
第5章 ドクター「K」
手伝えるものはあらかた片付け終わり、彼を残して俺だけスーパーへ買い出しに出かけた。
一緒に行くかと誘ってもよかったのだが、なんとなくひとりで冷たい風を顔に浴びたかった。


俺は、何事もあまりに深々と掘り下げて考え過ぎるのは不毛なことだと思っている。
後付けでもっともらしい理屈をこね、論理で武装したところで、いったい誰に何を言い訳して納得させようというのか。
内省も結構だが、何でもはっきりさせればいいってものでもない。
取り繕ったり、既成の枠に自らをはめ込んでみたとしても、幸せか不幸せかを決めるのは自分の、いわば気分みたいなもっとふわっとしたものだろうと思うのだ。

…とかなんとか言いつつ、頭がとっ散らかっているので少し整理はしておきたかった。


水炊きにするか。


男に欲情したのは初めてだな。
俺は、ゲイ…
というわけではないと思う。

いや、ゲイならゲイでもいいんだ。
同性愛者に対して特に嫌悪感はない。

欲しているのは「体」だけか。
それなら、相手はあいつでなくてもいいはずだ。
断じて誰彼かまわずではない。
俺は、俺はあいつがいい。

思えば昔から好感をもっていた。他の人とは異なる類いの。
こうなってみると微かな予感はあった気がするのだ。
自覚したのが彼の発症後だっただけで。

ただ、女相手よりよっぽど興奮している自分には戸惑っている。
10代の若造でもあるまいし、日に何度も、しかも仕事中にまで抜くほどとは。

あの異様な体に興奮するのか。
まぁ、そういうことなんだろう。
あの体で、あの従順さ。
あのどうしようもない体質…。

そう、新しい扉だろ? これは。
合意のうえであれば、法にさえ触れなければ、扉があったら開けたくなるのが人情だ。

いきなり求められたら、あいつは驚くだろうな。
いや、実際どうなんだ?
仕事仕事で長年女っ気のないやつだったが…。


戻って淡々と食事の用意をし、おそらく恥ずかしさからいつも以上に喋らない彼相手に、ほとんど俺ひとりで他愛ない話をしながら鍋をつついた。
そして堂々巡りで何の踏ん切りもつかないまま、じゃ、またな、と言って帰路についた。


それからしばらくは仕事に忙殺される日々が続いた。
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