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描いてください
第1章 好きな人
これなんだがと祐介くんが出した絵は、心象絵画だった
黒く渦巻いている何かと、赤い花びらが勢いよく混ざりあっている絵だった
タイトルは『欲望』
「凄い⋯」
これを描いたのかと思うと、無知の私には充分すぎるほどの力作だと思った
でもプロの世界ではそうではなかったらしい
「その日以来、キャンバスを前にしても、まったく筆が動かないんだ」
どうやら切実に悩んでいるらしい
私には、何もわからないけど⋯
「それって、急がないといけないことなの?」
「そんなことはないが⋯」
「じゃあ、ゆっくり見つけていけばいいんじゃないかな。心象絵画なら、日常のふとした時に、描きたい物が見つかると思うよ。」