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スグリ姫の試練(くすくす姫後日談・その3)
第4章 四週目

「…あとは、姫様もご存知の通りですよ。
姫様が生まれた時にツグミと王様は国への呪いを姫様とツグミに肩代わりさせて、ツグミは魔女の力と声を失いました。お産をしたばかりのツグミの体にとって、それはとても堪える事だったんです。それで姫様のお世話をする為に、バンシルを産んだばかりでちょうどお乳が出た私が呼ばれたと言うわけです。」

おしまい、とベラは話を結び、仕事があらかた終わってベラと並んで椅子に腰掛けていたスグリ姫は、ほうっと溜息を吐きました。

「そんなことが、あったのね…」
そう言えば大臣が王について「自分のことを棚に上げて姫の結婚を反対するなんて」みたいなことを言ってたな、と姫は思い出しました。
「そうですよ。それでも、二人とも未だに仲良しでしょう?色々あっても、たいていなんとかなるもんなんですよ」
スグリ姫は、ベラは自分がどんよりしているのに気がついて、この話をしてくれたのだ、と思いました。

「ありがとう、ベラ。ちょっと元気出た」
「いえいえ。…距離でも、暮らし振りでも、今の自分と遠いところに嫁ぐのは、勇気が要ることですよ。どうしたいかは、ご自分で決めていいんですよ」
そう言うと、ベラは姫の手を握りました。

「…というより、ご自分で決めないと、後悔します。このまま進められても、見合わせても、どちらにしても決めるのは、勇気が要ることです。どちらにされても、姫様がちゃんと考えて決めたことなら、皆納得しますよ…皆って言うのは婚約者様も含めて、ですよ」
「…見合わせる…のは、無理…だけど、」
私でいいのかなって思うの、と姫が呟くと、ベラが姫に聞きました。

「婚約者様が、姫じゃあダメって言ってるんですか?」
「ううん。」
「王様かツグミか大臣様か、どなたかがダメって言ってるんですか?」
「…ううん」
大臣は姫が嫁ぐことを心配しては居ましたが、駄目と言われてはおりません。
「じゃあ、ダメって言ってるのは、誰ですか?」
「………私。」
「でも、見合わせるのは、無理なんでしょう?」
「うん。」
「じゃあ、腹を括るしかないですね」
「はらを、くくる…」

姫がそう呟いたときに、ただいま、と扉を開ける声が聞こえました。
「おや、出かけていた連中の、お帰りですよ」
ベラは、 姫の頭を優しく撫でて、 お茶にしましょうかね、と、お湯を沸かしに立ち上がりました。

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