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スグリ姫の試練(くすくす姫後日談・その3)
第7章 幕間
「…はぁ。」

川を吹き抜ける涼しい風が、髪をさらりと撫でました。
この辺の子ども達は、今日は昼まで学校です。ここに来ているのは、自分ひとりだけでした。

もうすぐ、毎年恒例の、ここから川に飛び込む「儀式」の日です。
いつもは危ないからやってはいけないと大人に禁止されていることでしたが、この日だけ、自分と同じ年の子だけには、許されていることでした。

(でも、私は駄目って言われてるんだもん…駄目だよね…)

いつも一緒に遊んでいる幼馴染や女の子達も、大人の目を盗んで自分をからかってくる男の子達も、同い年の子はほとんど挑戦するのです。
途中で諦める子も居ますし、やりたくない子はやらなくてもいいのですが、自分はやってみたいのです。

(やってみたいなあ…それに、やらなかったら、良いウチの子はやっぱり弱虫だ!って、髪の毛引っ張られるだろうなあ)

水は気持ちいい音を立てて流れ、川面はきらきらと夏の光を反射しています。息を吸うと濃い緑の匂いが、鼻をくすぐります。
そんな気持ちのいい日なのに、気持ちは塞いだままでした。

飛び込む「儀式」をする子達は、突然飛び込むのではありません。
飛び込んだことのある年嵩の子が一人ひとりにきちんと付いて、危なくないやり方や場所を教えたり、別の場所で練習してみたりするのです。
いくら飛び込んでみたくとも、大人に駄目と言われている自分には、練習に付き合ってくれる子は居ませんでした。
どうしてもやってみたかったので、幼馴染のお兄さんにこっそり頼んでみましたが、とんでもない、と断られました。

「うっ…」
欄干から下を見ていたら、水面を見ていた眩しさのせいか、自分が仲間はずれになることが悲しいせいか、出したくも無い涙が出てきて、ぽたぽた落ちて行きました。

(ああ、そうかー…涙は、飛び込めるのね…」
せめて涙だけでも飛び込ませておこう、と思い、欄干に乗り出してみ…

「おい!」
「…ふぇ?」

…欄干に乗り出してみようとしたら、ぐいっと引き戻されました。
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