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スグリ姫の試練(くすくす姫後日談・その3)
第7章 幕間
「あっぶねぇな、お前!!足離れてたぞ、落っこちてぇのか!?」
こちらに向かって怒っている声は、自分より少し大きい男の子の様でした。
「落っこちてぇ…?」
言われたことをオウム返しに繰り返しながら、声の主を見上げました。
見上げましたが、引っ張られた勢いで橋の上に座り込んでしまったので空の方が眩しくて、顔がはっきり見えません。
「……落っこち…たいっ…落っこちたいぃぃ、落っこちたかったぁああ…!」
うわあーーーーん、と大声を上げて泣くと、その子は焦ったようでした。
「おい、馬鹿…クソっ、泣くな!」
そう言うと、自分の服をごそごそ探って拭くものを引っ張り出して、顔を拭いてくれました。
「急に引っ張って悪かった。済まない。許せ。」
それでもぐずぐずと泣き止まなかったからか、困ったようにを頭を撫でてくれました。
「おっ…落っこちたかったっ、…みんな飛び込めるのに、私だけできないぃ…」
「飛び込む?」
頭を撫でてくれるのを良いことに、渡された布に顔を埋めて、どうして飛び込めないのかを、ぐずぐずしながら話しました。
話は行ったり来たりして要領を得ませんでしたが、男の子は辛抱強く聞いてくれ、分かってくれたようでした。
「お前、ここから川に飛び込みてぇんだな?」
「うん」
「練習できりゃ飛び込めるのか?」
「…わかんない…」
「この川か…こっからじゃ分かんねぇな」
ちょっと待ってろ、と言う声がして、撫でていた手が離れました。
「う…?」
気配が消えたので顔を上げて周りを見回しましたが、辺りには誰も居りません。
そのうち水音が聞こえてきたので、座り込んだまま欄干の間から下を見ると、誰かが川で潜っていました。
「ふ??」
しばらく見ていたら、その誰かは川岸に上がって来ました。それから岩の上に置いてあったなにかを拾って、こちらに登って来るようでした。
「お、ちゃんと待ってたか。…ここ、結構深ぇな。」
シャツらしきものでがしがし頭を拭きながら、男の子が戻ってきました。
上半身が裸なので、さっき下で拾っていたのは、潜る前に脱いだシャツだったのでしょう。
「毎年飛び込んでんのは、この辺からだろ?」
そう言って男の子が、さっき引き戻されたあたりの欄干を叩いたので、うん、と頷きました。
「ここからそのまま、まっすぐ飛び込め。この深さなら、大人でも余裕だ」