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スグリ姫の試練(くすくす姫後日談・その3)
第8章 七週目と、その終わり
「お父様、お母様。ご機嫌麗しゅうございます」
「ご機嫌よう、スグリ」
「ご機嫌いかが?スグリ」
ハンダマ王子の結婚式以来顔を合わせる両親は、元気そうではありましたが、ほんの少し心配そうに見えました。
「…変わりは無いか?」
「はい。」
そうか、と王は返事をして、そのまま会話は途切れました。
「…スグリ?変わりが無くは、無いでしょう?」
「…お母様。」
何か言われるなら父からだろう、と予想していたスグリ姫は、母の言葉に驚きました。
「もっと、こっちにいらっしゃい」
「はい」
姫はお妃の手招きに従って、すぐ傍まで行きました。
お妃は姫をじっと見て、手袋を外して、姫の頬を撫でました。
「……決めたの?」
「はい。ご心配かけて、ごめんなさい」
スグリ姫は、王と妃の間に立って、二人を見ながら言いました。
「お父様、お母様。私、サクナがどんな人でも、サクナと結婚致します」
「スグリ…」
それを聞いて、父である王は、情けない顔になりました。
「お父様。大臣の小父様と一緒に沢山心配して下さって、ありがとうございます。私…私で大丈夫なのかなとは、今でも思うけど」
スグリ姫は、ほんの少しだけ目を閉じて、ベラの「最後は、度胸です」と言う言葉を思い出しました。目を開ける瞬間、どこかから川風が吹いてきて、緑の匂いがしたような気がしました。
「何かあっても、サクナと一緒に、なんとかします。…私は、お二人の娘なんですもの。きっと大丈夫ですわ」
王はそれを聞いて半泣きになっていましたが、妃は「?」と軽く眉を寄せました。
「?『お二人の娘』?」
「…あ。」
(そうだぁああ!馴れ初めの件は、秘密だったっ…!…私ったら、うっかりにも程があるぅっ!!)
「…えーっと、…それは、ですねー」
「お話中、失礼致します。」
スグリ姫が母への言い訳を考えていると、ノックの音と足音と、声と同時に、部屋の扉が開きました。