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アムネシアは蜜愛に花開く
第5章 Ⅳ 歪んだ溺恋と束の間の幸せ



 浴室のタイルに背をつけて立つ、巽の悩ましい声が反響する。

「は……ん……ぁ……、や、べ……あ……っ」

 わたしに勃つというのはあながち誇張ではないようで、由奈さんがしていた時よりむくむくと猛る様に、驚くと同時に嬉しいし愛おしくなる。

それでも由奈さんに少しでも巽は変化を見せたのだろうかと思えば、やりきれない嫉妬に駆られて、念入りに愛すことを決めた。

 わたしは座りながら天を仰ぐそれを口に含み、舌でぺろぺろと筋張った表面を舐めたり、リップ音をたててエラの張ったカサの部分にキスをしながら、両手の掌で太くて固い陰茎を上下に扱く。

するとまるでわたしから溢れる蜜のように、先端から零れるぬるぬるとしたものが愛おしくて、滑りやすくなったそれを懸命に扱いていれば、それはさらに質量を増しながら、なにかの生き物のようにびくびくと動くと同時に巽の声も大きくなった。

 巽の喘ぎ声なんて聞いたことがないわたしは興奮してしまい、もっと巽を喘がせたいと、技術はなくても愛情を多く、愛撫を濃厚にする。

 巽は喉を曝け出すようにして頭を壁のタイルにつけて、苦悶の表情のまま息を荒くさせ、薄く目を開くと虚空を見つめた。

 なんて色っぽい感じ方をするのだろう、巽は。

「アズ……こんなこと……、あいつに、してたのか……?」

 上擦ったその声はハスキーで色っぽい。

「ううん、はひめれ」
「上目遣い、やめろ……ああ、くそっ、なにか……屈辱だ」
「どうひれ?」
「喋るな……ああ……、お前……、本当に初めて……なのかよ……?」

 先端を細くした舌でぐりぐりと抉るようにすると、詰るような目が向けられた。
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