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アムネシアは蜜愛に花開く
第5章 Ⅳ 歪んだ溺恋と束の間の幸せ

「な、なんで赤くなるの。いつもは凄いことしてきてるくせに」
「うるせーよ。お前からは初めてで嬉しいんだよ、くそっ」

 アムネシアの専務をするほどに大人びているのに、まるで中高生のようなストレートな反応をして、わたしをきゅんとさせるなんてずるい。
 もしもあの頃、わたし達が仲良ければ、こんな可愛い巽をたくさん見れたのだろうか。

 愛おしいと思う。
 巽のすべてをもっと感じたいと、切に思う。
 巽以外を考えられなくなりたい。せめて今日は。

「だったら、もうひとつ、初めてのことをさせて?」
「ああ、なに?」
「……由奈さんが舐めたところ、わたしも舐めたいの」
「は!?」
「由奈さんが舐めたままのものを、わたし自分の中に入れたくない」

 そう赤い顔を背ければ、巽は言う。

「入れさせてくれるわけ?」
「……ん」
「でも口紅出来たらと、約束しちまったしな……」

 巽は頭を掻きながら大きなため息をつく。

「まあ、今までなんとかなったんだから、なんとかなるだろ。だけど、本気に舐めるの?」
「舐める。巽だって舐めていたじゃない。されっぱなしは」
「なんでそこで挑むんだよ、俺に。だったら……」

 巽はわたしの身体を持ち上げて歩き出す。

「せめて身体洗ってからにしてくれねぇ? さすがに俺、あいつに舐められて気持ち悪いし、それをお前に舐めさせたくねぇんだよ。間接キスされたら、たまったもんじゃないし」

 わたしは笑った。

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