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囚われる…
第2章 幻の頭
黒人の口からは流暢な日本語で
「ここは会員制だ。」
が繰り返されただけだった。
客も来ない。
従業員の姿すら見ない。
そんな店をただ睨みつける毎日…。
疲れた。
やっぱ、戦場に戻るか?
そんな泣き言を言いたくなった頃だ。
「お前、ここで何をしている?」
身体中に響くようないい声がする。
黒い革のロングコート、黒のセーターに黒のスラックス…。
靴は革靴でかなり高級なファッションだとわかるのに時計やアクセサリーを一切していないカラスみたいな男に突然声をかけられた。
いつものように夕方の4時に来て張り込みをしようとした瞬間だった。
「仕事ですよ。何か問題でもありましたか?」
一応、とぼけて返事をする。
この張り込み中に物音を立てたりはしていない。
ただこの空き店舗の2階の窓から道路を挟んで斜め左側に見える楼蘭の入り口をカメラで撮影をしているだけだ。
何度か無人カメラで朝から夕方までを撮影もしたが楼蘭には全く動きはなかった。
近隣住民か?
長期で張り込みをしていると興味本位で聞いて来る奴がたまに居る。
「お目当てはうちの店だろ?」
真っ黒な男がニヤリとする。
背筋がゾクリとした。
うちの店…、楼蘭か?
「いいえ…。」
相手に手の内を見せたくなくて一応は話を誤魔化してはみる。
180以上はあるか?
男は俺よりもデカい。
Vネックのセーターから見える首元ががっちりとしていて結構鍛えた身体だと感じる。
楼蘭のボディーガードか?
俺みたいな人間を排除する為に雇われるフィクサーという存在が出て来てもおかしくはない。