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囚われる…
第6章 世界のバランス



王宮の前でリムジンから降ろされた。


「これが王宮か…。」

「こんなの見るよりも匠の可愛い顔の方がいい。」

「見る為に観光をするんじゃねぇよ。」

「ならなんの為だよ?」

「思い出が欲しかったんだ…。」

「思い出?」


俺の命は馨次第…。

SEX三昧で馨が俺に飽きたと言えば俺は消されるかもしれない。


「馨と見る。次にこの王宮をテレビや写真で見た時に、あの時、馨と見たんだなって思い出すだろ?」


そうやって思い出になる頃まで生かして貰えるかはわからないがな…。


「別に思い出さなくとも俺はずっと匠と居るぞ。」


街中だというのに馨が俺にキスをして胸をまさぐって来る。


「コラッ!やめろ…。恥ずかしい。」

「俺は恥ずかしくない。俺の匠だから、ずっと抱いていたい。」


俺だって馨にずっと抱かれていたいさ。

楼蘭という恐怖も全て忘れて馨との快楽にだけ溺れる生活をしたいと思う。


「馨…、愛してるよ。」

「そうか。その言葉はなんとなく嬉しいな。」


馨が子供みたいな笑顔を見せる。

通り過ぎる人はベタベタとする男のカップルに変な顔や好奇の目を向けて来る。

ブラブラと馨と街中を歩き回る。


「世界遺産とかないのか?」

「アユタヤなら、ここよりもラオス寄りにあるが、更に車で1時間半くらいかかるぞ?」

「馨…、タイに詳しいな?アユタヤとか行った事があるのか?」

「世界中を知ってんだよ…。」


また背筋がゾクリとした。

世界中…?

馨ってなんなんだ?

未だに謎の男という部分は変わっていない。

馨を知りたいと近付き、馨に囚われる身になった。

なのに未だに俺は馨をほとんど知らない。


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