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囚われる…
第6章 世界のバランス

食事をしない…、ほとんど眠らない…、性欲が強いくせになかなかオーガニズムに達しない。
その程度しか馨を知らない。
身体だけが淫乱になってしまうほどに馨の愛撫をしっかりと覚えている。
「もっと…、馨が知りたい…。」
馨の手を指を絡めて握る。
「今夜…、面白いものを見せてやる。」
馨が俺を抱き寄せて耳元で囁いた。
日が暮れて馨があるレストランに俺を連れて行く。
フレンチレストランのようだが馨は特別な部屋へと案内をされる。
またしても男2人が寝そべったりと余裕で出来る幅広のソファーに低いテーブル…。
ゴロゴロ、ダラダラとして酒を飲んだり食事をするのが馨の普段の生活なんだと感じる。
だから、せっかく高級食材を踏んだんに使われた立派なフレンチのコースだというのに、無造作にまとめてその皿がテーブルに並べられる。
「ほら、匠…。」
ニコニコとして馨が俺に肉料理を食わせて来る。
「美味いか?」
「美味いけど、寿司が食いたいな。」
わざと試してみた。
10分もしないでやはり立派な寿司の盛り合わせがテーブルにやって来る。
馨が飯を食う為のレストランも全て監視をされている。
その確信にため息が出る。
「ほら、寿司が来たから食えよ。」
馨は平気な顔のままだ。
本格的なフレンチレストランですんなりと寿司が出て来る違和感すら馨には感じないらしい…。
「馨も食えよ。」
寿司を摘んで馨の顔の前に出す。
初めて馨が嫌な顔をする。
泣きそうな馨の顔…。
なんか可愛いとか思ってしまう。
「寿司…、嫌いか?」
「生魚は…。」
「俺とは食えないのか?」
少し嫌味を言ってみた。
馨が目を閉じて勢いだけで俺の指先にあった寿司を指ごと口に入れる。
本当に嫌そうな顔で寿司を飲み込むと一気にバーボンで流し込む。
「匠となら食うよ…。」
泣きそうな声で馨が言う。

