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囚われる…
第6章 世界のバランス

「世界のバランスってなんだ?」
「世界はパズルのピースのようなものだ。繋ぎ合わせて初めて完成をする。そのピースには必ず裏と表が必要になる。」
「それは、前に聞いた。」
馨がバーボンを舐めるように飲む。
「匠…、何故、日本では暴力団がいつまでも消えない?」
「そりゃ、法律の穴を利用して壊滅はしないように上手く逃げているし、その世代が終わっても必ず次の跡取りが出て来るからだろ?」
俺はその跡取りである幻の頭を求めてこの世界に触れてしまった。
馨がクスクスと笑う。
「匠は単純だな。素直で可愛いよ。」
「俺を馬鹿にしてんのか?」
「なら、警察は何故存在を続ける事が出来る?」
「そりゃ、犯罪者が居る限りは警察だって続いて当たり前だろ?暴力団だって無くならないのと同じだ。」
馨がまた笑う。
「その逆を考えてみよう。例えば犯罪者が全てこの世から消える世界が存在するとする。その場合、世界中にある警察はどうなる?」
「そりゃ、警察だって犯罪者が居なければ…。」
そこまで言って、なんとなくだが馨の言いたい事の意味をする部分が見えて来る。
犯罪者が居なければ警察という組織は世界にとって不必要で無駄な存在になってしまう。
全ての世界には裏と表が存在をするからバランスが取れている。
つまり裏である犯罪者がいるからこそ表である警察も存在する事が出来る。
暴力団を潰せないのではなく、警察という正義の組織を継続させる為には暴力団という悪の組織を上手く存続させなければならない。
「それが…、世界のバランス?」
身体の中から恐怖がまた湧き上がる。
馨が俺の後ろに立つ。

