この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
囚われる…
第2章 幻の頭
俺の名刺はすぐに扉の前に立っていた小間使い的な存在の奴が会長の前まで運んで行く。
余計な動きはしない。
すればこの事務所から身に覚えのない盗難届が出されて俺が犯罪者として警察に行くという面倒が発生をしたりする。
俺の名刺をしばらく眺めていた初老の会長の口がゆっくりと開かれる。
「岡野 匠(おかの たくみ)…フリーのルポライターか?」
「はい…。」
「何故、頭の事を聞きたがる?」
「跡取り問題は重要なポイントですから、どこの雑誌も欲しがるネタです。」
こっちの質問には答えないくせに、平気でこっちには質問をして来やがる。
それを辛抱強く耐えて信頼が生まれれば少しは相手の口も軽くなる。
戦場で訓練を受けた兵士もそんな感じだった。
軍の機密だからと初めは口が重いが寝食を共にして質問に答えているうちに口が軽くなる。
訓練を受けていない暴力団ならそれが容易いと思った。
実際、今まで情報元として接触をして来た奴らは誰もが謝礼を払えば口が軽く、挙げ句に目立ちたがり屋だから自己アピールが凄かった。
しかし、それは下っ端の話であり、会長クラスはそんな簡単には行かない。
「そうか…、帰れ。」
会長がまた重い口を開いた。
「まだ質問に答えて頂けていません?」
「取材をしたいとお前が言ったらしいがこっちは受けるとは言った覚えはない。」
「ですが…。」
「特別に教えてやるが、頭はこの事務所に現れる事はない。」
「何故です?」
「お前の質問は一つだけのはずだな?」
今回は引き下がるしかなかった。