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囚われる…
第8章 囚われる…



町のあちこちに屋台が出ている。

小中学生の子供がはしゃいで走り回る。

田舎町…。

平凡な風景だが、気ままにカメラのファインダー越しにその風景を眺め続ける。

このカメラに俺が収めたいものが見つかれば、俺も少しは変わるのだろうか?

俺が収めたいもの…。

蜃気楼のような存在…。

あれは…、なんだった…?

幻の…。

思い出せない…。

ぼんやりとファインダー越しに町中を眺め続ける。

町全体が夕日で赤みを帯びて来る。

いつか…、どこかで見た事がある懐かしい風景…。

誰もが見た事のある平凡な風景…。

そんな写真が俺は好きだ。

戦場は限られた人しか知らない。

だから、その戦場でも出来るだけ平凡な風景を趣味で撮っていた。

戦場なのにカメラに笑顔を向けて来る子供達…。

軍人がビールを飲み、ご機嫌で騒ぐ酒場の風景…。

そんな写真ばかりを撮って来た。

もう一度、戦場に戻るか?

そんな事を考えた時だった。

ファインダー越しに見る景色の中に何かの違和感を感じた。

もう一度、カメラを覗いてみる。

俺の存在を気にしないで歩く人…。

もしくは、俺の存在を気にする人は変に気を使い撮影の邪魔にならないようにとファインダーの中から外れて行く。

なのに1人だけまっすぐに俺のカメラに視線を向けて来る男がいる。

まるで、彼をモデルとして撮影をしているような気持ちになる。

そのくらい、男前でかなりいい男だ。

Vネックの黒のTシャツに黒のスラックス…。

ポケットに入れられた手…。

腕には黒のジャケットが下げられている。

まるでカラスのような男だ。

ドクンッ…

と心臓が派手に鼓動をする。



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