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囚われる…
第8章 囚われる…



本当にいい男だな…。

俳優のように整った顔立ち…。

カメラのレンズをズームにしてピントを合わせて顔のアップをファインダーに収める。

シャッターを押してはいない…。

しかし、間違いなく彼は俺のカメラを真っ直ぐに見ていると、はっきりとわかる。

カメラマンが珍しいのか?

こんな田舎町には似合わない真っ黒な色男…。

観光客か?

ただ、ずっと俺のカメラを睨むように俺を見続ける男…。

カメラを下ろし、不自然にならない程度の速度で彼の前を通り過ぎる。

彼の背中側から撮影をしようと再びカメラを構えてファインダーを覗く。

ドクンッ…

また、心臓が鼓動をする。

彼はまた俺のカメラの方を見ている。

カメラをまた下ろし彼に近付いてみる。


「すみません、もし貴方の撮影をしたとしても差し障りはないですか?」


一応、確認を取ってみる。

たまに本気で嫌がる人がいる。

肖像権の話を持ち出して来る人もいるが、一般人の肖像権は価値がないのだから、写るのが嫌ならファインダーの中に入って来るなとも思う。


「撮影は…、困るな…。」


独り言を呟くように男が言う。

ドクンッ…

心臓が更に高まる音を奏でる。

この声…。

どこかで…。

また意味不明なデジャヴが始まった。


「すみません、嫌なら撮影はしないようにこちらも気を付けますから、そちらもカメラの前に入らないようにしてもらえますか?」

「あぁ…。」


切ない顔で俺を見る男…。

誰だ?

どこかで会ったか?

これだけの男前なら、一度でも会話をしたのなら、そんな簡単に忘れたりはしない。

いや…、空白の3ヵ月がある。



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