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囚われる…
第8章 囚われる…
港のすぐそばの海の上で花火が上がる。
だから港の一部を一般開放して花火が見られるようにはなってはいるが、漁師達が船を停めている側の港は一般人立ち入り禁止区域になる。
勝手に船にイタズラをされたりしない為の予防策だが俺は組合に許可を貰っているから中に入れるようになっている。
その港側からなら音と光の差が1秒もないくらいに花火に近く、人混みもないからゆったりとシャッターチャンスを狙える。
「こんな場所に勝手に入って大丈夫なのか?」
男がニヤニヤとして聞いて来る。
全く灯りのない暗闇の港で男と2人きり…。
何故かゾクゾクとしながら俺は興奮をする。
「あぁ…、俺は仕事だから、ちゃんと組合に立ち入り許可を貰っているんだ。」
入っては行けない場所の許可…。
首筋がチクチクとしやがる。
なんだ?
何を思い出そうとしているんだ?
もどかしい…。
だが何故かワクワクとしている。
知りたい…。
その好奇心でジャーナリストの端くれをやっていた。
彼は俺を知っている。
彼から秘密を引き出さなければ…。
それは快感を感じさせると同時に恐怖を感じさせる。
パンドラの箱を開けたパンドラの気持ちが理解出来るような気がする。
興奮のし過ぎで身震いをする。
「寒いのか?」
彼が無表情な顔で俺に聞いて来る。
向こう側の港は人混みで蒸し風呂のようになっているだろうが、こっちの港は無人だから海風があり、涼しく感じる。
Tシャツにジーパンだけで来たから上着を持って来るべきだったと思った。
「あぁ…、少し…。」
「これを…。」
彼は手にしていたジャケットを俺の肩に乗せた。
背中に彼を感じる。
この感覚…。
この温もり…。
この匂い…。
いや…、何かが足りないと感じてしまう。