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囚われる…
第8章 囚われる…



お願いだ。

狂いそうだ…。

だから、お願いだ。

壊れそうになる…。

いや…、壊されたい?

初めて会ったばかりの名前も知らない彼に囚われる…。


「お願いだ!」


お願いだ!けい…。

俺から離れるな…、けい…。

何かの呪文のように言葉が俺の頭を駆け巡る。


「けい…じ…。」


見知らぬ男をそう呼んでいた。

涙が溢れて止まらなかった。

彼がゆっくりと俺を抱きしめる。


「匠…、すまなかった…。」


耳元で囁く声…。


「嘘つき!離れないって言ったくせに!」


全く覚えていないのに俺は何故か彼を詰っている。


「匠…、匠が居ないと生きて行けない。匠を安全な場所へ帰してやろうと思ったのに…。」

「馨…。」

「もう…、離れないから…、でないと俺が狂ってしまう…。」


意味はわからない。

ただ涙が流れ続けて、身体が熱くなり、身体の芯までが疼き出す。


「抱いてよ。もう2度と離れないでくれよ…。」


何故、俺は彼にそんな事を言っているのだろう?

頬のキス…。

胸をまさぐる手…。

そして唇が重ねられる。

薄らとバーボンの香りがする。

やっと全てのピースがハマった気がする。

馨…。

彼はその名前しか持っていない男。

世界で一番危険で世界で一番俺が安心を出来る男。

誰よりも俺を愛していて俺が愛している男…。

部分的にしかまだ思い出せないが間違いなく俺の馨だと感じる。

久しぶりの馨の愛撫だから身体が敏感に反応をしてしまう。

サワサワとTシャツの上を馨の手が這う。

乳首が痛いくらいに愛撫を求めて突き出て来る。

馨の指先がほんの少しTシャツの上から乳首に触れて来る。


「あんっ…。」


変な声が出てしまう。



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