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僕の彩芽
第10章 十
もし逃げて秋人さんに見つかった時の事が怖くて、逃げられない。それに、龍生さんとも今日知り合ったばかりだし……。そんな知り合ったばかりの人と沖縄に逃げるなんて危険な事、出来るわけがない。
「そう……彩芽ちゃん、でも気が変わったらいつでも言ってね」
「はい……」
再び頭を下げる。……私のせいで辛気臭くなってしまった。空気を変えないと!
「龍生さん、飲みましょう!焼酎ロックにしますか?!」
明るく振る舞いながら、空いたグラスを手に取る。だが――
「彩芽ちゃん、俺と付き合わない?」
耳に届いた真剣な声と同時、唇へ龍生さんの唇が重なる。瞬時に、私は石のようにピシッと固まった。
「っ……」
付き合う?というか、キス?えっ……えぇぇぇ!
「何するんですか!いきなり!」
一気に酔いも覚めた。
「俺は本気だよ。直感で、彩芽ちゃんの事好きになったんだ」
唇を離すと、龍生さんはニコッと微笑んだ。
「そんな!やっぱりチャラかったんですね!龍生さん!今日会ったばかりで!」
「うーん。それは否定出来ないけど、肯定もしないよ。ただ彩芽ちゃんの事は本気だから。携帯貸して」
「……持ってません」
「はぁっ?!今時?!そんな嘘が通用すると思ってんの?」
いや……本当に持ってないんだよ。貧乏で。
驚く龍生さんに、私はうふふと微笑み返した。