この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
僕の彩芽
第10章 十
* * *
翌日。空の色は青く、白い雲が掛かっていた。秋人さんより早く起きて、ベッドから見えた窓の外の景色にもう昼間か……と寝たまま考えた。そして体を起こして、トイレにでも行こうと思った矢先。
「う……」
後ろから程好く筋肉のついた両腕にガッチリ体を抱き締められている事に気付くと、顔を青ざめた。……寝ている筈だ。その証拠に後ろから気持ち良さそうな寝息が聞こえてくる。
「すー……すー……」
「くっ……」
何で起きたらこの状態なんだよ!ぬいぐるみか!私は抱き枕か!
「……お酒の匂い、してないよね……」
昨晩の事を思い出すと、不安になった。送迎のスタッフが、秋人さんが帰宅する前にマンションへ送り届けてくれたけど。昨日はつい勢いで焼酎を飲んでしまったし……秋人さんにエルで働いた事がバレないか心配だった。
「どうか、気付かれてませんように……」
両腕を引き離しながら、呟く。そのままどうにか両腕から逃れ、体を起こすと、私はベッドから降りようと足を床につけた。後ろからパジャマを掴まれると、ベッドへ引き戻されたが……。
「ポチ……何処行くんだ?」
「……秋人さん!起きたんですか?!」
「ポチ……何処行くんだ?」
「トイレですよ!そんな何回も聞かなくたって……!」
良いのに。そう続けて話そうとして、額へ口付けられた。
「おはよう。ポチ」
眠気眼で、寝癖をつけて、普段クールの時とは別人。……今なら倒せる。いや、そうじゃなかった。
「おはようございます」
「昨日も夜寂しくなかったか?」
「……大丈夫でした……」
まだエルで働いた事、バレていそうにない。良かった……。