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僕の彩芽
第10章 十
「ポチ、湯が溜まるまで休んどけ」
「……はい」
トイレを済ませると、リビングへ向かった。ソファには秋人さんが座っていて、私に気付くなり話し掛けた。それに返事をして、私はソファへ歩み寄る。
いつもと変わらない格好の秋人さん。
ワイシャツにスーツのズボン。腕には高そうなゴールドの腕時計。
……その光景を見ただけで、きゅうっと胸が苦しくなる。
「秋人さん、隣に座っても良いですか?」
「当たり前だろ?一々聞くなんて、どうした……」
「くっ!くっついても!良い!ですか?!」
……し、失敗したぁぁぁ!何を口走ってんだ、私!ペットの分際で!
「どうした……顔が耳まで赤いな?」
ソファの前に立つ私を見ながら、秋人さんはまた可笑しそうにくくっと笑った。そして――私の手を引っ張る。
「良いに決まってるだろ?わざわざ聞くな。なつっこいペットは主人に自分からすり寄るものだ」
「はい……」
その言葉に安心しながら私は秋人さんの左側へ座ると、逞しい左腕に抱き付いた。