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僕の彩芽
第1章 プロローグ
都内にある風俗街。店や看板の派手なネオンとは逆に、地味な女が一人、道の真ん中で男から引き摺られていた。カーキ色のモッズコート。その首根っこを掴まれ、ズルズルと石像の様に引き摺られる。
「お前も運が悪いね。借金した親から身売りされるなんてさ!」
180㎝は背丈があり、ガタイも良い。運動神経が良さそうで、大方足も速いだろう。こんな大男から逃げるなんて真似すれば、きっとすぐに掴まえられるのがオチ。
「……」
かといって助けを求めても、誰も周りは助けてくれそうにない。皆自分のことで必死だ。客引き、スカウト、風俗の客、風俗嬢、皆おちゃらけているが必死な目をしている。こうして捕まったのが運のつき。親から売られたのが、私の運命ってことか。
「つーか、お前、客つくかね?!地味でダサすぎっしょ!はっはっはっ!」
「……うるせぇな」
雪ノ下 彩芽(ゆきのした あやめ)、19歳。爆笑しながら引き摺り続ける男に、最後の悪あがきでチッと舌打ちだけした。