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僕の彩芽
第1章 プロローグ

 ……――数時間前、アパートに大男が押し掛けてきたのが、始まりだった。荒々しく玄関のドアを叩き、母親がドアを開けると、柄悪く言ってくる。黒のスーツ、派手な柄シャツに、サングラス。どう見ても、お笑い芸人のコント姿だろう。

『あんたの借金、500万だよ!どうすんの?』

『……娘を……』

 母親の後ろに立ちながら心配で見守っていた私の方を、母親がチラッと見ると、大男は私に気付いて、今度私に話し掛ける。

『あれ、娘?名前は?』

『彩芽よ……19歳なの』

 私の代わりに答えたのは母親だったが、そのまま続ける母親の言葉に度肝を抜かれた。

『役に立たないかもしれないけど、娘と引き替えに借金チャラにしてくれない?』

『役に立ちそうにないけど、良いよ!』

 ……そ、そんなバカな話があるかぁぁぁ!男も即答するなし!二人して役に立ちそうにないって言うなし!献身的に今まで支えてきた娘を売るとか、あり得ないだろ……。

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