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僕の彩芽
第9章 九

 こうして私はお婆さんになりました。めでたし、めでたし。……って、こんな人生やっぱり嫌だぁぁぁ!

「秋人さん、私やっぱり嫌です!」

 秋人さんに命じられるがまま浴室へ入ったが、恥ずかしくなり出ていこうとする。

「ペットにだって意思はあります!嫌なものは嫌なんです!」

 よくここまで耐えたと思う。自分を褒めてあげたい。

「意思……それもそうだな」

 脱衣所へ戻り、バスタオルで体を包み込む私。そんな私の方は見ず、一人浴室に立ったまま考え込むと、秋人さんは何か閃いた様に両手を叩いた。

「よし!じゃあポチの意思を聞こうじゃないか!」

「えっ?い、良いんですか?」

「聞くだけ聞こう。何か要望はあるか?」

 怒られるかと思ったのに意外だ……。要望なんて、山程あるよ……。

「まず、お風呂は一人で入りたいです」

「却下!」

「寝るのも一人で寝たいです……」

「却下!」

「あんまりベタベタ体に触らないで下さい……」

「却下!」

「……どれも却下じゃないですかぁぁ!何なんですか!秋人さん!酷すぎますよ!」

 脱衣所と浴室には私の悲痛な叫びが響く。秋人さんは至って真面目だ。

「ポチ、俺はな……初め面白半分でお前を買った。だけどな……だんだん、だんだんと、可愛くて仕方なくなってきてる!たった3日間一緒にいただけだぞ?!仕事に行く時、ポチから離れるのも辛いんだ!どうしてくれる!」

「秋人さん……」

「俺はもうポチ中毒だ。だから500万も突き返した。金なんていらない。ポチが欲しいんだ」

 これって、愛の告白……?いや、まさか、そんなわけないよね……。



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