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くすくす姫の誕生日(くすくす姫後日談・その4)
第4章 スグリ姫の「お誕生日」

姫がおととい南の服を纏った所は、結局二人しか見ていないのです。
そしてその服は残念ながら、その直後から今に至るまで、人に見せられる状態ではありません。
残念なことになった衣装は、都ではなく南の店でお手入れに出した方が色々な意味で安心だろうという事になり、現在サクナの荷物の中に、厳重に仕舞われておりました。
「…みっ…じかい衣装だって、サクナが言ってたっ!!」
「へえ、そうなんですか。」
姫の髪に飾る花を装飾品の色に合わせようと石と花とを見比べながら花を選り分けていたバンシルは、彼女にしては珍しく、姫の動揺に気付きませんでした。
うっかりを大変大雑把に誤魔化した姫は、貰った時とは全く別の意味で、この装飾品を遺してくれた先代当主に感謝しました。
「…こっちは、腕環ですか?」
「ううん、足環なんですって。」
ほっとした姫は足環を手に取ると、自分で足に嵌めてみました。
「…足だと見えないわね、勿体ないわ…」
丈の短い上着と足首が出るパンツという南の衣装とは違い、今日身に着けているドレスは、足まで隠れる長さです。
足に装飾品を飾ってもドレスの裾に隠れてしまって、見えなくなってしまうのでした。
「これ、腕になさったらどうですか?」
花を選び終えたバンシルは、跪いて足環を外し、姫の手に渡してくれました。
それから髪の仕上げをするために、選り分けた花を手に取りました。
「そうね…邪魔にならないかしら?」
「ぎりぎり大丈夫そうですけどね。」
受け取った腕環を手首に嵌めて、手を動かしている姫を見ながら、二人はうーん、と考えました。
「せっかくだから、夕方の正餐までは見えるところに着けようかしら。そしたら邪魔に見えないと思うの。」
「それが良いですね、そうなさいませ。…出来ました。」
「わあ…!」
腕環を嵌めるので俯いていたスグリ姫は、バンシルの声で初めてちゃんと鏡を見ました。
赤い石の首飾りは、石の色に合う花が髪に飾られたことで、先程身に着けたときよりも一層、姫に似合って見えました。

