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イかせ屋…
第2章 取り立て



部屋にその人を入れてから自分がまだスウェットにすっぴんで髪もボサボサだという状況に気付く。

狭い部屋だから今更慌てて着替えるとか出来ない。


「タバコはいいか?」


その人が言う。


「どうぞ…。」


雄君が使ってた灰皿を渡す。

とりあえず、コーヒーくらいは入れようと思いお湯を沸かす。

インスタントしかないけれど、私の目を覚ますにも今は必要なアイテムだ。


「杉田さん、お仕事は?」

「昨日、会社が倒産をして…。」

「なるほど…。」


何故か初めて会った彼と普通に会話をしてる。

突然だけど、甘い香りが部屋中に広がった。

何?これ?

彼がタバコに火を付けてる。

ゆっくりと吸って、煙りを一気にプハーッと吐き出すのではなく、口元からとろりと流れ出すように煙を吐き出す吸い方を初めて見る。


「匂いが気になるなら言ってくれ。」

「いいえ、そのタバコ…、甘いバニラみたいな香りがするのですね?」

「タバコとは少し違う。シガリロなんだ。」


違いはよくわからない。

だけど、ちょっといい香りだとか思っちゃう。

コーヒーを彼の前に出す。


「ありがとう…。」


礼儀正しく彼は微笑む。

やばそうな人なのに本当に紳士だと感じる。


「では、本題に入る。岡部はあるところから2千万の借金をした。残念ながら杉田さんはその連帯保証人になってる。この事実を理解をしてるか?」


紳士が悪魔へと変わった。


「はぁ!?」

「これが借用書のコピー。ここにお前のサインと捺印がある。この筆跡はお前ので間違いはないか?」


一枚の紙切れを差し出して来る悪魔…。

間違いなく私のサイン…。

だけど、それを書いた覚えがない。



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