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イかせ屋…
第2章 取り立て
いつ私がサインをしたかを必死になって考える。
2ヵ月前…
雄君が私に保証人をして欲しいと言った。
「レコード会社と契約をするけれど、就職と同じで保証人が必要なんだ。」
雄君の就職という言葉に少し浮かれた。
レコード会社の規約や説明書の書類をいきなりに見せられて、その下にある半分しか見えない紙切れを雄君が指差しながら
「ここに梓のサインと判子をくれ。今すぐ持って行かないといけないから急いでるんだ。」
と急かされてサインをした。
私のサインが終わると書類をバサバサと無造作に束ねた雄君は家から飛び出した。
そのサインが借用書のサインだと今の私に突きつけられたのだ。
「そんな…。」
愕然とするしかない。
返済期限は今日。
だから私から雄君は逃げたんだ。
自分に笑っちゃう。
騙されてる自覚はあった。
ただ、ここまで騙されてるとは思ってもみなかった。
「それで、返済についての話合いだが…。」
高級スーツの人が淡々と話を進める。
「警察に行きます。」
そう答える。
「無駄だ。まず彼氏に騙されたという事実を立証が出来ない。結婚詐欺にしてもお前の場合は該当をしない。だけどお前が保証人である事実は民事上の事実であり、警察は民事には介入をしない組織だ。」
ちょ…、ちょっと待って!
立証?該当?民事?介入?
お願いだから日本語でプリーズ!
ゆったりと高級スーツを着た男の人がタバコの煙りを口元から垂れ流す。
甘い香りだけがこの狭い部屋に立ち込める。
「困ったな。」
全然、困ってないようにその人が微笑む。
「すみません、まずはそちらの立場を教えて頂けますか?」
「ああ…、そうだな。俺は曽我 昌(あきら)。今日はとりあえずお前の取り立て屋をやってる。」
優雅にインスタントコーヒーを飲みながらその人は答える。