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イかせ屋…
第2章 取り立て
それでも、とりあえず曽我さんはちゃんと紳士のままだった。
私が着替えて外に出るまで玄関の外で待ってくれる。
やばそうな人だけど本当は信用が出来る人なのかもしれないと思う。
新しい自分…。
夢に見た自分とは違う方向に進んでるけれども、今は仕方がない。
マンションの前には黒いベンツが停まってる。
さっきのスカジャン男が慌てて後ろのドアを開ける。
「奥に乗れ…。」
曽我さんに言われベンツの運転席の後ろ側に座る。
曽我さんが私の隣に乗り込み、助手席に座ったスカジャン男に向かって
「ヒロ、お前は岡部の行き先をさぐれ。多分、他の女の家だ。」
と言う。
他の女…。
やっぱりか…。
冷めた気持ちだから涙も出ない。
「大丈夫か?」
曽我さんが優しく私に聞く。
「ええ、全然…。」
感情が薄いから身体が感じないのかもしれない。
今更、そんな事を理解しても仕方がない。
ベンツが発進をして私が知らない街へ辿り着く。
かれこれ1時間近くは車で走って来た。
「降りろ。」
ドアを開ける曽我さんにそう言われて降りた先は立派な日本家屋のお屋敷の前。
ほえーっ!?
時代劇に出て来そうな家!
「あぁ?テレビや映画になら撮影で使われた事が何度かあるぞ。」
曽我さんは平然として私に説明をする。
立派な引き戸の玄関。
自動ドアじゃないのに勝手に開かれる。
「おかえりなさいませ。」
明らかに危ない雰囲気を持つ人々が10人くらい居て頭を一斉に下げて来る。
恐怖に身体が強ばった。
「しばらくは誰も近寄るな。梓が怯える。」
曽我さんがそう言って私の肩を抱く。