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イかせ屋…
第1章 彼氏
旅行代理店…。
お客様の苦情などにも対応をしなければならないという職場でウジウジとされると業務に支障を来たすという考え方だった社長。
だから、会社の同僚はみんなが仲は良く、来るもの拒まず去るもの追わずな付き合いをしてた。
そんな社長だからサバサバと倒産を決めたのだと不謹慎な開き直り方をする人まで出て来る。
確かにサバサバとした社長だった。
だけど、それだけで会社を潰して社員を路頭に迷わせるような人ではなかった。
でも…、今はそんな冗談を言わないとやってられない気分を社員全員が抱えてる。
そう…、明日からどうしよう?
そんな問題にサバサバとした性格だけで対応なんか出来ない。
「ヤケクソな怒りで暴走をしないだけマシじゃないか?」
不謹慎な冗談を言った人を庇うように植草君が言う。
「そうだね…。」
とは言ったものの明日への不安に押し潰されそうになるのは事実だ。
「本当に困ったら、連絡をしろよ。」
植草君はそう言って私の前から立ち去った。
本当に困ったらか…。
植草君の実家は実は老舗旅館を経営してる。
彼の場合、再就職に失敗をしても帰ればいいやで終わるからサバサバとしていられる。
私の場合、そうはいかない。
植草君の気持ちはありがたい。
植草君の気持ちは知ってる。
だけど今は植草君を頼る訳にはいかない。
ため息をついて家に帰る。
「ただいま…。」
マンションとは言え玄関を開ければ奥までが丸見えになる安くて狭い1Room。
玄関が開くと同時に窓際の壁にあるベッドからボサボサ頭の男が頭を上げる。
「あれ?梓、今日は早くねぇ?」
もう昼だというのにまだベッドで寝てた男に少し腹が立った。